『貧しき人びと』を読んで、ドストエフスキーは心根の優しい人ということがわかった。
この名前を聞くと真っ先に思い浮かぶのは
文豪
という文字だろう。
あまりにも有名であり
著名人が推薦する本であるがゆえに
これほど庶民が読む本と無縁のような印象がある。
しかし『この貧しき人びと』はまさに
庶民を対象にした本であり、彼が切実に庶民に寄り添って
世間を見ていたかがひしひしと伝わってきた。
ドストエフスキー=文豪
という定義から
ドストエフスキー=心底心の根の優しい人
というイメージに変えてくれた本だった。
この本は難しい表現はなく、非常に読みやすい
経済至上主義の現代においては、
まず仕事が出来る人、能力がある人
に価値が置かれる。
そうであるなら、
心の優しい、善良で不器用な人々は
どうすれば良いのか。
果たしてこの世に生きる価値はあるのか。
どうやって自分の価値を自負しなければならないのか。
このような問いに対して真剣に、
本当に真剣にドストエフスキーはそのような人々に
寄り添って考えていてくれたことがこの本で伝わってきた。
読んだ後、自分の心の中で様々な化学変化が起きているのが分かる。
まだそれをうまく言葉にできない。
ただ、言えることは
この本を読んだことにより、僕の心は前よりも磨かれ
人として一歩前進んだ実感があるということだ。
こんな体験をさせてくれる本に出合えてよかった。