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ぽろっぽの日記

-想いを言葉と写真で-

「もののあはれ」について【後編】

僕の記憶の中で「もののあはれ」をハッキリと感じたのは大学生になったときだ。当時はまだ大学に入りたてで、その時はサイクリング同好会の新入生の歓迎ランだった。

 

その時僕は、伊豆大島三原山を自転車で登っていたのだが、とにかく体力のなかった僕は辛い気持ちでいっぱいだった。なんで自分はこんな辛い気持ちをしながら自転車で山を登らなきゃいけないのだろう。そんなことを自問自答しながらノロノロと山を登っていた。

 

そしてある時、木々に囲まれた道から、視界が一気にひらけ周りがひたすら海を一望できる景色に変わった。その時、僕は思わず「ああ」と溜息が出ていた。

きれい、美しい、素晴らしい、そんな言葉や理屈云々よりもただ「ああ」と溜息が出てきた。特にそこは何の名所でもないところだったけど、自分にとっては人生観を変えてしまうほどの景色であり体験だった。

 

この体験以来、僕は再び同じ体験をするために自転車をこいでいるといっても過言ではない。この体験をしたからといって別に何か得するわけでもないし、お金が入るわけでもない。まったく無利益、無目的とも言えるかもしれない。でも僕にとっては「生きがい」の一つになっているのだと思う。社会人になり効率、利益が優先され、それが大きな価値観を占める環境に置かれ、僕自身もこの「もののあはれ」の体験を忘れかけていた。でもそれは間違ったことなんだ。僕にとって大切にするべきものは「もののあはれなのではないかと。本居宣長は僕たち日本人に大切なことを教えてくれている気がしてならない。